放課後。

彼女に言われた通り一人で帰ろうとしたところ、

「ハンちゃんハンちゃっでぇっ!?」

恐らく透だろう。振り向きざまにローキックをかます。

「何?」
「っててて・・・灰斗このあと暇だろ?ゲーセン寄ってかね?」
「お、久しぶりに行くかい」

そんな会話をしながら玄関へ向かっていると、とある空き教室からガタン、と音がした。

「?なんだろ?」
「どーせ教師がなんかやってんだろ」

そういいながら扉の窓から覗くと、数人の男がゴソゴソと何かをやっている。

「あの制服の色は先輩だね」
「めんどくせぇ、帰るぞ」

そう言いながら窓から目を離そうとした時、一人の先輩が女物のカバンを握っていることに気がついた。

「・・・?」

なんとなく見たことあるカバン。その持ち主は。ついているストラップで判明した。

「兎谷の・・・!?」

その瞬間、頭のなかを嫌な予感がよぎった。その顔を見た透は、

「嫌な予感、してるね。灰斗の予感は下手に当たるから・・・」

そう言いながら窓をのぞく。

「何が見えたの?」
「カバンだ。青いストラップのついている・・・」
「兎谷さんのじゃないか!なんで・・・」
「・・・今日、放課後に先輩に用があると言っていた。多分あいつら。それで兎谷のカバンを持っていたとすると・・・」
「ああ、多分ね」

二人は、制服の上着を脱ぎ、ワイシャツの袖をまくった。ふと透の方をみると、くそ真面目な顔をしている。こいつが本気な証拠だ。

「行くか」
「了解。」

俺が扉を叩く。

コンコン。

「失礼します。」

そう言って中に入ると、先輩全員がこちらを向いた。その隙間から・・・

(兎谷・・・!)

見える。彼女の姿が。落ち着け、落ち着け・・・

(行け!)

手で後ろの透に合図を送る。彼は机の陰をかがんで移動した。先輩には気づかれていないようだ。

「自習をしたいのですが、この教室使ってもいいですか?」
「ダメダメ、他探して。俺たち取り込み中だから」
「そうですか。」

そう言いながら、パチン、と指を鳴らす。すると・・・

「ふっ!」
「ぐえっ!?」

回り込んだ透が一人の意識を刈り取った。

「てめっ・・・「逃がしませんよ、先輩がた」

透に掴みかかろうとした先輩のみぞおちに、肘鉄を入れる。

「う・・・げぇっ」

一撃で落ちる。残るは三人。俺が二人、透が一人だろう。

「っざけやがって!」

繰り出される素人の拳。それを外側に受け、相手の懐に入る。

「っっっ!?!?」
「外受け。空手なめたらダメですよ先輩。」

放たれた正拳突き。またもみぞおちに入った拳は、くぎゅ、という嫌な音と共に先輩をノックアウトする。