あたしは夏希を見上げる。
夏希がそっと、あたしの部屋の窓を開けた。
夜の冷たい風が、あたしの頬を撫でる。
「……でもね、お姉ちゃん。あたしは一度もお姉ちゃんがいなかったらって思ったこと、なかったよ」
あたしから見えるのは夏希の背中だけ。
夏希がどんな顔をしてるのかなんて、分からなかった。
だから、なんでそんなことを言うのかも、分からなかった。
「……当たり前、でしょ。いっつもあんたはみんなに優しくされて褒められてきたんだから」
「……そう、かな?でも、お姉ちゃんだってそうじゃない」
あたしも?
ふざけないで。
夏希には、分からないでしょう?
あたしの黒い気持ちなんて。
だって、貴方はいつも輝いた世界にいるんだから。
「どこが?夏希には分からないよ」
「……そうかもね。だって、あたしはお姉ちゃんとは違うから。でも、これだけは覚えていてほしいな」
「……なに?」
夏希は開けた窓からベランダに出た。
「あたしは、小さい頃からずーっと変わらずお姉ちゃんが大好きだよ」
そして、夏希はあたしを見て微笑んだ。
あたしはそれを見て驚き、目を見開く。
思ってもいないことを言われたから。
いや、違う。
夏希の笑顔が、今まで見たどの笑顔より美しくて切なかったから、だ。


