玲汰先生は、そんなあたしのことなんか気にもせずに話を続ける。
「いや、お前が毎日家に来るから、俺は学校でやってる仕事を家でしなくちゃいけなくなるんだよ。学校でしかできない仕事もあるから本当はもうちょっと遅く帰ってくるんだけど……早く帰ってくると仕事も溜まってくし、色々困ってて。」
頭の中で描いた可能性は、見事に散っていった。
ほんの少し期待していた自分は、本当の馬鹿なんだと思う。
遠回しに、もう来るなと言っているじゃないか。
なにが、思っていた内容と違う、だ。
あたしは溜まっていく涙を零れ落ちないように必死に止めながら、
「じゃあ、もう来ませんね……」
と言った。
玲汰先生に言われて、その言葉を聞いて、傷つくくらいなら自分から言ってしまえばいい。
そうしたら、いくらかは楽になる。
震える手と、声。
本当は言いたくないし、聞きたくない言葉。
いつだって、あたしはそういう言葉をわざと受け止めて自分を傷つけてきた。
それは、逃げたくないとかいう格好良い理由なんかではなくて、ただ、そうすることでしか自分を守れなかったからだ。
あの時のことを、最低な自分のことを、忘れないために。
夏希から、逃げないために。
自分を傷つけることでしか夏希への償いが出来なかったから、そうしないと自分が崩れてしまいそうだったから。
他の方法を探すことなんて、したことなかった。
それ以外の方法は、夏希のためにならないのだ。
また、だ。
もう慣れているでしょ?あたし。
あたしはこれ以上自分が崩れないように、心の準備をした。
でも、玲汰先生は、
「そういうことが言いたいんじゃなくて」


