玲汰先生は冷たくそう答えた後、キッチンへと向かって行った。
あたしはそんな玲汰先生を目で追いながら、考える。
玲汰先生、いつお風呂に入ったんだろう。
ボーっとしすぎてたせいか、玲汰先生がお風呂を入りに行ったことに全く気付かなかった。
なのに自然と出た言葉は、玲汰先生がお風呂に入っていたことを知っていたみたいになっちゃったな……。
それよりも、玲汰先生は何故あたしに話しかけたんだろうか。
話しかけたのに特になにも言わずにキッチンへと消えて行った彼に、不信感を覚えた。
だからか、彼は見えていないけれどいることが分かっているキッチンを見つめたまま、心の中の時を止める。
再びその〝時〟が動いたのは、やっぱりあたしに話しかけたことに意味があったことを証明している、言葉の続きだった。
「お前さ、これからも俺の家に来るつもり?」
唐突のように放たれた言葉は、前から覚悟していた言葉でもあった。
居心地が良くてあの日から自然と毎日通っているが、玲汰先生にとっては迷惑以外のなにものでもないということは分かっている。
だから、いつか「もう来るな」と言われることを覚悟していた。
きっと、それを言われるのは、今日だ。
だけど、聞きたくない。
分かっている言葉だけど聞きたくなくて、まるで全てをシャットアウトするかのように、零れそうになる涙を止めるかのように、目をぎゅっと瞑った。
玲汰先生に見捨てられたら、〝あたし〟という人間が終わる気がする。
他の何処にも居場所がないあたしは。
孤独の中で生きているあたしは。
ボロボロに傷ついた心はもう、小さく突かれただけで壊れてしまうほど脆くなっていて。
足音が、近づいてくる。
もう、認めないといけないんだ。
最低なあたしには、救いの手など差し伸べられないことを。
「おい、」


