午前3時、先生のカオ。






 驚いて、あたしは足を止めた。

 そして、玲汰先生の方を振り返る。


 玲汰先生のカオは、相変わらず無表情で、なにも読み取れなかった。

 ただ、その綺麗な瞳だけがあたしを捉えていた。



「……いるんじゃない?子供を大嫌いな親くらい」


 わざと、震える拳を握りしめて平気を装った。

 玲汰先生にそんなことを言われて傷ついた心を隠すために。


 玲汰先生はやっぱり、何も掴めない表情だった。


 あたし、このカオが苦手だ。

 こっちは何も掴めないのに、あたしの全てを見透かしているかのようなカオだから。




「それさ……」


 そこまで言って、玲汰先生は言葉を消した。


 次はなにを言われるのか。

 身構えたあたしだったけど、玲汰先生はそのまま考えるように黙り込んでしまった。



 そして、一度外した視線を再び合わせると、

「やっぱ、いい。先に入ってて」

 と、無愛想に言った。



 視線を合わせられただけで緊張していたあたしだけど、その言葉を聞いて思わず固まってしまった。


 だって玲汰先生は、身構えても、緊張しても、特に何も言ってこなかったから。



「う、うん……」

 予想外の言葉に、あたしは驚く。


 でもあたしは踵を返して、リビングへと続く廊下をゆっくり歩き始めた。

 まるで、ロボットのように。


 言われたからそうしただけで、あたしの頭の中は未だに混乱していた。

 思っていた言葉と、全く違ったから。


 一瞬あたしに興味を見せたのに、またその興味は失せたのだろうか。

 それとも、興味とかいう問題じゃないのだろうか。


 今のは、担任としてだったのだろうか。



 理解ができない。


 ただ、一つだけ分かった。


 なにも言われない。

 もう、緊張しなくていい。