そんなことを考えている間に、あたしの目の前には【宮城】の表札があった。
玲汰先生に誘導され玄関まで入ると、鍵を閉めた玲汰先生があたしに言った。
「なあ、親に連絡だけでも入れといたら?心配、するだろ」
今更、なにを言っているのかと思った。
そんな親ならば、補導されて玲汰先生の家に泊まったあの日だって、電話の一本でもよこしていたはずだ。
あたしだって高校生なんだし、携帯電話くらい持っているのだから。
だけど、電話どころか次の日家で顔を合わせても、なにも言ってこなかったのだ。
それに、あの親はあたしがどうなってもどうでもいいと思っているだろう。
子供に暴言を簡単に浴びせられるのだから。
夏希には、そんなことはしなかったけど。
いや、あたしにもしなかった。
夏希が〝生きていた〟頃は、そんなことはなかった。
今のあたしの親は、子供を心配するという文字が最も似合わない親なのだ。
だから、別になにも言わなくていい。
そう、なにも。
「いいの。どうせ心配なんてしてないから」
あたしはそう言いながら、靴を脱いで低い段差を上がった。
そして、リビングへと繋がる廊下を歩く。
きっと、あたしに興味ない玲汰先生はこれ以上なにも言ってこない。
そう、思ったのだ。
「子供の心配しない親がいるのかよ」
でも、珍しいことに玲汰先生は、あたしを呼びとめたのだ。


