あたしのその言葉を聞くと、玲汰先生は何も言わずに歩き出した。
きっと、玲汰先生の家に向かっているのだろう。
だって、もと来た道を辿っているから。
あたしはその2・3歩後ろをゆっくりと歩いて、ついて行く。
あたしのさっき言ってしまった言葉は、玲汰先生に聞かれていたはず。
でも、まるで何もなかったかのような静寂が二人を包んでいた。
殺して、なんて恐ろしいことを言ったのに。
どうして玲汰先生は何も言わないのだろうか。
冷静さを取り戻したあたしの心の中で、そんな疑問が浮かんだ。
あんなの嘘だけど。
でも、その言葉の重さは分かっているつもりだ。
なのに玲汰先生は『……んなこと、簡単に言うなよ』と言っただけだった。
あの後も、今も、なにも言ってこない。
いや、触れられないのは有り難い。
だけど、触れてもらえないと、どうしても気になってしまう。
さっきあたしが言った言葉を、玲汰先生はどう思ったのか。
怒られたりだとか、諭されたりするのならまだいい。
でも、なにも言われないと相手にどんな風に思われたのか分からないから、余計な心配をしてしまう。
だからといって、わざわざ結果はよくないと分かっているのに聞くことはできないけど。
聞いたって、返ってくる言葉はあたしを傷つけるだけなのが目に見える。
だけど、だけど。
やっぱりどんな御託を並べても、気になっていることに変わりはない。
もしかして、玲汰先生はまた、ただ単に〝面倒くさかった〟のかな?
どれだけあたしに無頓着なんだろうか。


