~千夏side~
「おかえりー」
「……ただいま」
リビングの扉が開いたのを確認すると、あたしはキッチンから声を掛けた。
ほんの少し間を空けた後に返事が返ってくるのは、もうお決まりだ。
「……てかさ、お前自然に馴染んでんじゃねぇよ」
コートを脱ぎながら玲汰先生がキッチンに顔を出した。
あたしは鍋の中を混ぜながら玲汰先生の顔を見る。
「そんなこと言われてもね……あっ、今日肉じゃがだよ」
「……そっか……良い匂いだな」
玲汰先生はそう言うと、「着替えてくる」寝室へと向かって行った。
玲汰先生があまりに何も言わないから、ほぼ毎日玲汰先生の家に勝手に入っている。
そしてその度に夕食を作って、たまにお風呂も入らせてもらっている。
まあ、泊まってはいないんだけどね。
でも、玲汰先生がなにも言わないのが悪いんだ。
こうやって傲慢な態度を取っているのにもかかわらず特になにも言わない玲汰先生は、逆に慣れまで感じさせる。
まあ、あたしがいつも夕飯を作るから、少しは健康になったのではないか。
なんて、昔の玲汰先生のことを何一つ知らないのにそう思っているあたし。


