玲汰先生はなにも言わず、腕を組みながら椅子に腰かけている。
その口が開いたのは、あたしが来てから何分か経ったとき。
「……これ」
玲汰先生はポケットからなにかを取り出した。
あたしはそれを見た瞬間、驚いて目を見開く。
「なんでっ」
「それは、俺のセリフなんだけど?」
きっと、大分怒っているのだろう。
玲汰先生はあたしを睨みながら立ち上がる。
「……ご、ごめんなさい。昨日、失くしちゃって」
「ああ、だろうな」
玲汰先生が少しずつあたしに近づいて来る。
恐くてあたしはその分だけ後ろに下がった。
「……今朝、学校の落し物の中にあったよ。なんか見覚えあるなーって思ってさ」
「……はい、そうだと思います」
玲汰先生からの威圧がすごく恐かった。
でも、当たり前だよね。
「……俺の家の鍵なんだけど?お前がこれ失くして困るの、俺なんだよ」
「……知ってます」
ドアに背中がくっ付いてもう後ろに下がれないあたしは、ギュッと目を瞑る。


