そりゃ、そうだ。
愛する娘を殺した奴が、目の前にいるのだから。
平然と、息をしているのだから。
悲しくて、辛くて、苦しかった。
お父さんの視線が、痛くて。
胸がとてつもなく、
「……痛い」
自然と口にしていた言葉。
それを聞き、お父さんの目つきが変わる。
「その何十倍も夏希は痛かったんだ!!」
お父さんが立ち上がって、あたしの胸ぐらを掴む。
そしてあたしをもう一度叩こうと手を振り上げた。
「止めて!……もう、やめて、ください……千夏を殴ったところで、夏希は、帰っ、てこない、でしょ……」
だけどお母さんが大声を出して止めたから、お父さんはゆっくりと振り上げた手とあたしの胸ぐらを掴む腕を離した。
あたしは何処か遠くを眺めながら、椅子に凭れかかった。
「ち、なつ……教えて?なんで、夏希にそんなこと言ったの……」
お母さんがか細い声で、あたしにそう訊ねる。
「……ムカついたから。嫉妬、してたから。もうずっと前からそう思ってた。夏希なんて、死ねばいいのにって」
はっきりとそう告げた口は渇ききっていて、割れた唇から血が出てくる。
苦いその味が何故だか愛おしかった。
死にたいから、だろうか。


