ひなの目に映るのは、何故か半分だけ押された様に開いているドア。
「何で……、半分…だけ……」
震える声でそう言った時、まるでひなが振り向くのを待っていたかの様に、
ギィー……
と残りの半分のドアがゆっくりと押されていく。
誰も触っていないのに。
恐怖のあまり、この場から今すぐ逃げたいのにひなの足は動かない。
目を背けたいのに、背ける事すら出来ない。
ドアが開いていくのを見るだけ。
少しずつ見えるその光景にひなの身体がガタガタと震えた。
腰までの黒い髪の女性。
風もないのにふわっと靡くその黒髪。
紺のブレザーの下には白のブラウス。下は紺のプリーツスカート。
学生服だ。
そして何よりもひなの目が釘付けになったのは彼女の唇の色。
彼女の唇の色は色がない。死人の様に。
その彼女の唇がニヤッと笑ったかと思うと、何かを話す様に口を動かし出した。
声なんて聞こえない。
でも、何と言っているか口の動きで分かってしまう。
彼女は長い前髪の間から見えるギロッとした目でひなの目を真っ直ぐ見ながら、
『見ぃつけた』
そう口を動かしたのだ。
「い、…いやぁぁぁぁぁあ!!」
ひなは悲鳴が口をから出たのと同時に、動かなかった足を必死に動かす。
そして、足を縺れさせながらも出入口へと駆け出した。
ここの外には亮介が居る!
助けて!
助けて!亮介!
バッと勢いよくトイレからひなが出た瞬間、そこにいた亮介が驚いて目を丸くした。
「どうした!?」
そう訊いてくれるが、ひなにはそれに答える余裕が無い。


