それでも僕は君を離さないⅡ

彼はやっと唇を離した。

「今のは違反です。」私は小声で言った。

私の息があがり呼吸が荒いのを見て

かなりご満悦のようだ。

「この続きはいつにしようか?」

私は困った顔をするしかなかった。

「今すぐどうにかしたい。」

さらに私を困らせることに

喜びを味わっている時間などないことを知るべきだし

私は彼に言い返したい気持ちを我慢できなかった。

「誰か来たらどうするんですか?」

「大丈夫。内側から鍵をかけた。」

「資材室に鍵をかけるなんて大問題になっちゃいます。」

「わかった。俺が悪かった。謝るよ。」

彼はドアノブをつかんで廊下に出ようとした。

私はその背にもうひと言付け加えた。

「先輩、私もさっきのに負けないくらい情熱的にキスできることを覚えておいて。」

「奈々、それは俺だけが知っていればいいことだ。他の男に教えるなよ。」

彼はドアを閉める前にウインクまでした。

そんな彼を私は努めて冷静な目で見送った。

彼のウインクはかなり色っぽく

私以外の女性なら

誰もが一発でメロメロになりそうなくらい危険なものだと

私は初めて気がついた。


   ~ 完 ~


最後までお読みいただきましてありがとうございます。
それぞれが抱いた切ない想いをお届けできたら幸いです。
これからも恋する気持ちを大切に書いていきたいと思っております。
北原留里留