奈々の病室へ行った。

彼女はぼんやりしていた。

俺は声をかけた。

「また来るよ。」

「あの、いつ?」

「土曜日の夜になる。」

「そう。」

「奈々。」

「はい。」

「俺は君に夢中だった。束縛できないほど愛した。君の想いをなかなかつかむことができなかったんだ。つらかった。離れていても君が俺を想ってくれていたと知った時は報われた。だがそれは全て過去のことだ。今は自分のことを一番に考えてゆっくり体を休めてほしい。」

奈々は小さくうなづいた。

俺は彼女の頬にそっと手を当て

親指で優しく撫でた。

奈々は目を閉じて

頭を俺の手の中にもたれかけてきた。