翌日、剛はデパートへ行って、化粧品と女物の洋服を買った。店員がいぶかしげな顔をしたので、あわてて恋人へのプレゼントだと嘘をついた。代金を支払うときに、指先が震えた。


帰り道、ずっと下を向きながら歩いた。すれちがうひとと目があうだけで、自分のやろうとしていることがばれてしまいそうな気がした。


アパートにもどると、すぐに鍵をかけた。部屋のカーテンをしっかりと閉め、携帯電話の電源を切った。


デパートの紙袋をひらいて中を見つめながら、剛は、もうもどれないぞ、とつぶやいた。