まぶたにはアイシャドウの代わりに、青の色彩ペンが塗られていた。その無機質な青色は、瞳に呪いをこめたかのような陰気な雰囲気をかもしだしていた。


唇には口紅の代わりに赤の色彩ペンが塗られていた。塗るときに失敗したのか、唇の両端から頬まではみだしており、まるで口が裂けているかのように見えた。


そんな化粧でも、鏡の中の剛の顔は、しっかりと切美に変貌していた。


「あなた、わたしを消そうとしたわね」切美の目は血走っていた。「あんなに愛してあげたのに、わたしを消そうとしたわね」


剛の胸の鼓動は狂ったように速くなった。自由に動かせる首から上だけが、小刻みに震えだす。


「許せない。あなたを完全に消してあげる。ただでは消さないわ。残酷で苦痛に満ちたやり方で、あなたをこわしてあげる」


「何をする気だ?」


震え、かすれた声で、やっとそれだけ聞けた。


「簡単なことよ。あなたの身体を完全にのっとるために、身体をもっと女に近づけるの」


切美は洗面所を出た。


そして部屋の机の前に来ると、机の上にあったハサミを手にとった。