クールで不器用な君。



勉強がひと段落ついたところで、再びキッチンを覗く。



材料からみると、今日はピラフのようだ。




野菜を細かく切る七瀬くん。




手つきが危なっかしい。



「…っ。」



一瞬顔を歪ませ包丁を置く。



「どうしたの?」



近づいてみてみると、どうやら包丁で指を切ってしまったようだ。




ポタポタと血は流れていた。




「大丈夫っ!?」




「え、うん。全然平気。」




「えっ、あ、どうしよ…。」




こういうときってどうすればいいんだっけ…




「あ、そうだ。」




「ん?」



血が流れている指を咥えれば消毒が出来る……らしい。



パクッと指を咥えると、口の中に鉄の味がした。



「山瀬さん!?」



「?」


しばらくすると、七瀬くんは顔を赤くしながらこう言った。



「……そろそろ離してくれない?これ結構恥ずかしいんだけど。」




待って、良く考えたら人の指を…しかも男の子の指を…まるで変態…




すぐに離すけど、私は自分のしたことが恥ずかしくて七瀬くんの顔を見ることが出来なかった。




「その……えっと、絆創膏持ってくるね!」




赤い顔を隠すように、キッチンを離れた。



リビングの棚にある救急箱から絆創膏を取り出すと、七瀬くんの指に貼る。




「ありがと。」




「いいえ。それより、その………さっきは急に指咥えたりなんてして、ごめんね?」




「昔の人は良く、傷口にはツバつけとけば大丈夫って言うよね。ま、実際のところ
あんまり意味は無いけどね。でも安心して、嫌ではなかったから。」




「そ、そっか。」





「あ、それよりピラフ作らなきゃだ。」




「そうだね。」