クールで不器用な君。





山瀬さんがお風呂に行ってから約30分。



意外と早くお風呂から上がってきた。




女子は普通に1時間は入ってるのかと思ってた。




「ふぅ、いい湯だったな~。」





黒くて長い髪がが濡れているせいで肌に張り付いている。




両親に似ている山瀬さんはやっぱり美人だ。



多分髪色と目の色はお父さんに似ていて、髪質と色白なところ、あと目が大きいところはお母さん似だろうな。



美人かつ可愛い。



そんでもって、あのふわふわとした性格。



男心を鷲掴みにする。




「ドライヤーっと~。」




「山瀬さん、俺がやってあげようか?」




その綺麗な髪に触りたくて、つい言ってしまった。




「いいの?」




「うん。」




「ありがとう。」




すんなりとそれを許してしまう山瀬さんは、凄い不用心だと思う。




ソファーに座りながら俺は山瀬さんの髪を乾かす。



さらさらの髪からは、ほのかにシャンプーの匂いがする。




これがまた男心をくすぐるってやつなんだろうな……。




「あのさ、この間はありがと。」



会話が何もなかった故に、俺はあの指輪を拾ってくれたお礼を改めてした。



「んー?この間?」




「指輪拾ってくれて。」




「あ、ううん。でも、七瀬くんがあんな可愛いの持ってて意外だな~って思った。」




あのビーズの指輪は、ある子に約束の証として貰ったものだ。




まぁ、小さい頃の話だし。




今になってはその約束なんて無意味なことなんだけど……




「山瀬さんさ、あのビーズの指輪に見覚えない?」




「うーん……ごめんね。わかんないや。」




山瀬さんは少し考えた後で答えを出した。




けれど、答えは予想通りで、分かり切っていたことなのに少しだけショックだ。






その言葉の後に、そういえば。と再び話し始める。





「私たちって小さい頃に会ったことあるんだよね?」





「まぁ…。」





「なんでかそのころの事が全く思い出せないの。なんでかな?」




「全く?」




若干落ち込んでいる自分は何なんだ。




「そう、全く。あ、でも誰かと遊んだことは覚えてるの。多分それが七瀬くんかな?」





「多分そうなんじゃない?まぁ、無理に思い出そうとしなくていいよ。別に思い出したって山瀬さんの得にはならないでしょう?」





本当は思い出してほしいんだけどな




「そうだね…。」