リビングにもどり、テーブルにビールを置いて、ぐったりと伏せる。



そして、寅吉の書き置きをぼんやりと眺める。




「…………ったく、どういうことなのよ」




結婚式の日取りは、ずっと前から決まっていた。


寅吉はひどく世間離れしているし、結婚式を忘れたら困ると思って、あたしはちゃんとカレンダーにも書いておいたのだ。



それなのに、どうして?


二週間前になって突然、『旅に出ます』なんて言って、いなくなっちゃうなんて。



どういうつもりなのよ?




もしかして………。



あたしは、この二週間で何度も拭い去ろうとして、それでも消えてくれなかった不安に、再び苛まれる。