モテるんは俺の趣味やっ!

「ふー、疲れが飛んでくわぁ」






夜空にゆらゆらと昇っていく煙を見上げながら、たっちゃんはしみじみと呟いた。




お花畑アタマのくせに、飛んでくほどの疲れなんかあるんかい、と突っ込みたくなったが、あたしは黙っていた。




だって、あたしは今、それどころじゃないのだ。





なぜかというと。




簡単に言えば、寒いから。





秋になったとはいえ、まだ昼間はけっこう日が照っていて暑いくらいの日もあるが、さすがに夜が深まってくると、風が冷たくなってくる。




風が吹き抜けた瞬間の肌寒さに、あたしは微かにぶるりと身を震わせて、パーカーのジッパーを首元まで上げた。





するとたっちゃんが、ちらりとこちらに視線を送ってきた。






「なんやミサキ、寒いんか」





「へっ」





いきなり言われて、ちょっと驚く。






そうや、たっちゃんて、めちゃめちゃ鋭いんやった。



モテるために人生捧げてきとるから、いっつもひとに気ぃつこぅて、ひとの気持ちに敏感になっとんねやな、きっと。






「たしかに寒なってきたなぁ」






たっちゃんは独り言のように言って、煙草をくわえると、着ていたジャケットをぱさりと脱いだ。