モテるんは俺の趣味やっ!

ヤマモトさんが灰皿に煙草の先を押しつけ、火を消した。





遠くから、学祭の賑わいが聞こえてくる。




ここは、別世界みたいに静かだ。






ヤマモトさんがちらりと見下ろしてくる。







「………たっちゃんが、ミサキのこと好きやて思いはじめたんは、出会ってすぐやったらしいで?


ほんでもな、たっちゃんは、ミサキが男に対して拒否感ゆうか、踏み込ませんとこがあるて思うたんやて。


なんやったかな、ミサキは恋愛に臆病なっとる気ぃするて言うてたわ。



ほんで、今どうこうすんのは得策やない思うから、しばらく様子見するつもりなんやーて。


せやけど、その間に誰かに横から奪い去られたらどないしょお思うと、むっちゃ心配でつらいんです、てな」








ーーーほんま、たっちゃんて。




あたしがひた隠しにしていたはずの弱さや臆病さを、たっちゃんはいとも簡単に見破っていたのだ。




確かにあたしは、居心地のいい男友達だと思っているたっちゃんにいきなり気持ちを告げられたとしても、とうてい受け入れられなかっただろうし、気まずくなって距離を置いてしまっていたに違いない。




たっちゃんは、それが分かっていたのだ。




言葉にしたわけでもないあたしの気持ちを、たっちゃんはその鋭い洞察力で汲み取って、あたしに負担をかけないように振る舞ってくれていたのだ。





なんちゅうか、ほんまに。



たっちゃんて、すごいわ。