「………遅なってもたな。


そろそろ行こか、ミサキ」





「あ、うん」






立ち上がろうとした瞬間、酔いが回ってきたのか、少しよろけてしまう。




するとすぐにたっちゃんが気づいて、





「お、あぶないで」





と言ってあたしの手を引き、ぐいっと一気に立ち上がらせた。





男にしては細い腕に、思いのほか強い力が秘められていることにあたしは少し面食らいつつ、たっちゃんの背中を追う。






「………にしてもなぁ」







たっちゃんが独り言のように呟いた。






「まさか、ミサキとヤマモトさんが………ほんま驚きやわ。


今世紀最大の大事件やわ」






「今世紀最大て。


21世紀はあと980年以上あんねんで」





「いやぁ、これ以上びっくりな事件はありえへんやろ」






たっちゃんはぶつぶつとひとりごちる。




そして、ちらりとあたしを振り返った。







「………せやけど。

ミサキて、ひと見る目ぇあるな。


ヤマモトさんを選ぶとは、隅に置けん」