「そろそろ行こか。


ミサキ、店戻らなあかんのやろ?」






「あ、うん。ほな出よか」






頷いて答えると、たっちゃんは伝票を持って立ち上がった。




あたしも立ち上がり、たっちゃんの後を追って、その背中に問いかける。






「たっちゃん、代金ていくら?」






たっちゃんは「えーと」と伝票を見て、こちらを振り返る。






「ピラフとコーヒーで900円」





「ん。二人分で1800円やな?


こないだカラオケおごってもろたから、今日はあたしが払うわ」






あたしはそう言って、ジーンズの後ろのポケットから財布を取り出す。





たっちゃんが、「ほんま? ええのん?」と嬉しそうに笑う。







「ええで。バイト代入って、いまけっこう余裕あんねん」







たっちゃんと食事したり飲んだりするときは、基本的に、割り勘か、交代で奢り合いをしている。




男やから女におごるべき、みたいな考えはあんま好かんし、男友達に毎回毎回おごってもらうような道理もない。




たっちゃんもあたしの考え方を分かっているので、いつも黙って割り勘にしてくれるのだ。