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「ーーーほんで、そのふざけた眼鏡は一体なんやねん」
と、あたしが言ったのは、たっちゃんがかけている、大きな黒縁めがねを指している。
そのめがねときたら、顔の半分くらいを覆い隠さんばかりの、あほみたいにでっかいめがねだ。
さっき店に入ってきたときに突っ込みたかったけど、タイミングを逃していたのだ。
でも、テーブルに向かい合って座っていると、そのあほめがねが目の前にあるわけで、やっぱり黙っていられない。
たっちゃんが目ぇ悪いなんて情報、聞いたことないけど?
すると、たっちゃんは、ぱっと顔を輝かせた。
「やっと突っ込んでくれたー!」
なんでか知らんけど、めちゃめちゃ嬉しそうや。
「な、な、このめがね、可愛ええやろ?
だて眼鏡てなんかおしゃれやんな!
そんで、俺の顔の小ささを際立たせる、この大きさ!!
さっき雑貨屋で一目惚れして、衝動買いしてもうてん♪♪」
たっちゃんはめがねをかけなおして、ずいっと顔を前に出してきた。
どうやら、「ほんまやなぁ、可愛ええやん」とでも言ってほしいらしい。
でも、そうは問屋が卸さない。



