たっちゃんの鼻歌を聞きながら、あたしはふぅ、と吐息をもらして、空を仰ぐ。




青白く透き通った月は、いつの間にか、ずいぶん高くなっていた。





やっぱり、秋の月はきれいやなぁ……。




そう考えたところで、ん?と思って、腕時計を見る。




暗いので見えにくかったけど、よく目を凝らすと。







「―――――あっ!! あかん!!


もうこんな時間や!!」







あたしの叫びを聞いて、たっちゃんも「へ?」と時計に目を落とす。




そして、慌てたように立ち上がった。







「ほんまや!!


終電のがしたらえらいこっちゃで、ミサキ!!」






「あかんあかんあかん!!


いそがな、たっちゃん!!」






「こんまま直接、駅行くで!!」






たっちゃんがわたわたとカバンを肩にかける。




あたしも荷物をまとめつつ、







「ほんならみんなに帰るて言わな!!」





「そんな余裕ないで!!


走りながら、カホにでもメールし!!


俺はワタナベに連絡するわ!!」





「りょーかいっ!!」







あたしたちは夜闇の中、最寄りの駅に向かって、ばたばたと坂を駆け下りていく。






『終電の時間やから先帰るな。みんなによろしく』とカホにメールを打ち終わって、スマホをカバンのポケットに入れた。