素直になりなよ、ドラゴンくん!


『もっと撫でて、いいこいいこしてー!アゴじゃなくて、頭をいっぱい!もうちょっと右ー。うん、きもちー、うれしいー。ゴロゴロ、うにゃーん。ずっとなでなでしてー、いい子にするからー』


「って、誰だ、貴様はあああぁ!」

自身のイメージにツッコむドラゴンの咆哮は、吹雪を消し去る勢いであった。

ぜえぜえと、肩で息するドラゴンを、僧侶は不思議そうな目で見る。

そんな折ーー

「ふっ、よく分かったな。俺たちが、ここにいると」

姿を現した、三人の人影。

「ねえ、勇者。あんなドラゴン、この雪山にいたかしら」

露出度80%な服に、三角帽子を被ったお姉様系女魔法使い。

「わたしは知らないにゃー。怖いにゃー、勇者しゃま。守ってぇ」

猫耳付き白フードを被った、ロリロリっ娘系僧侶。

「ふっ、プレイヤーが母親に『ちょっと、あんたいつまでゲームやってんの!晩ご飯よ!』と怒鳴られ、近くにセーブポイントがないからと、ゲームの電源を入れたまま立ち去られたせいで、仕方がなく、ここで待ちぼうけを食らっていたわけだが、よもや、こんなイベントに遭遇するとはな!」

特に秀でたところもない、勇者と言われれば誰もが想像する姿の主人公。

「面白い!三周目だが、こんなイベントは今までなかったぞ!さあ、我が剣で屠ってやろう、緑龍よ!」

お立ち台のように、少し高い場所からこちらを見下ろす勇者一行。

それらを眺め、アグアグさんは思う。

(ゲームプレイヤーの守備範囲が広すぎやしないか)

勇者はゲームプレイヤーの第二の自分。それらを挟む女魔法使いと僧侶。

お姉様系の魅惑ボディが好みかと思えば、幼稚園児体系の僧侶まで引き連れて。

(こっちの僧侶は、あいつらを足して二で割った、というところか)

「ふふん、俺の強さに恐れをなしたか、ドラゴンめ!だろうな、だろうよ!この世界を三周もした俺に、もはや敵はいない!毎回、強くてニューゲームだからな!周回を重ねるごとに俺のレベルは上がり、ついにはカンスト!ふはははっ、若輩魔王相手と釣り合うように、次は装備なしで挑む縛りを所存よ。拳一つで奴を倒す!」

テンション高めな勇者に引きつつも、僧侶レキに何かあってはと前に出る。

「あの人が、勇者……」

「強さに溺れたものの末路だ。物語を進めれば、誰とて自然と魔王(ラスボス)を倒せる作りとなっているのに、何を思ったか己は最強と横暴の限りを尽くす。

あいつにも、レベル1で村周りのスライムでこつこつレベル上げをした時もあったろうに」