素直になりなよ、ドラゴンくん!


ーー

山頂に行くまでの道のりは、ひどい有り様だった。

雪山のモンスターが何匹も倒れ、大地が抉れている。

戦場跡と言えよう有り様で、大方、覚悟はしていたのだ。

雪山の頂上、ボスがすでに勇者にやられていることは。

「そん、な……」

青い龍。トライアグルの色違いたる、氷属性のドラゴンーーフロステが横たわっていたことに、僧侶は膝から崩れる思いとなった。

しかして、微かに聞こえた音に僧侶は顔を上げる。

「まだ、生きてます!」

ヒールの魔法を使用する。先と違い、青いドラゴンの傷は治っていく。

「おい、あまりヒールを連敗するな。MPが尽きるぞ」

たしなめるトライアグルに構わず、僧侶は回復を続けた。

物語終盤の雪山ステージのボスたるフロステ。そのHPは、5000ほど。一度につき、100しか回復しないヒールではこうするしか他なかった。

「うぅ、どうして……。まだ、いっぱい傷があるのにぃ」

レベル3では、片手で数える程度にしかヒールは使えない。非力さを呪う僧侶の頬に湿った物が触れた。

ふと見れば、青いドラゴン。フロステが目を開け、僧侶の頬を舐めている。

「良かった!目が覚めたんですね!」

グルグル鳴くフロステ。ボスキャラなので言葉は話さないが、傷を治した僧侶にお礼を言っているには違いなかった。

良かった良かったとフロステを撫でる僧侶。ぎゅうっと抱きしめたり、頬ずりをしたり。フロステもフロステで、僧侶に甘えてとーー