「だ、大丈夫ですかっ」
「う、うぅ……」
「酷い、こんな酷い傷、誰が……」
ヒールの魔法をしても、回復しない傷は、このモンスターが手遅れであることを示す。
こんな酷い傷をつけるのはーー
「勇者(ゲームプレイヤー)に、やられ、たん、だ」
息絶え絶えのアイスマンは、無念を口にする。
「野郎……。俺たちが火に弱いことを知っていて、炎属性ついた装備で来やがった!防具も、対氷属性で……つぅ、みんな、みんな、やられちまった!あいつ、何のためらいもなく、俺の仲間を火破りにしていきやがった!」
氷の涙が流れる。最後の力を振り絞り、アイスマンは僧侶の手を握った。
「た、頼む!頂上に、俺たちのボスがいる!ボスがやられちまったら、この雪山も終わりだ!助けてくれっ、この雪山には俺の女房がーー俺の子を身ごもった女房、が……」
がくっと、力尽きるアイスマン。
僧侶がいくら呼びかけても、ぴくりともしない。
消え行く体。光の粒子となる直前。
「ああ、せめて。自分の子供をこの手で、抱きたかったなぁ」
そんな、切なる願いと共に、アイスマンは消えた。
「ひくっ、ひくっ」
「僧侶……」
「ごめんなさい、泣いてばかりじゃいけませんよね」
「いや……」
慰めてみせるドラゴン。真っ赤な目を見ながら思う。


