素直になりなよ、ドラゴンくん!


ーー

「うわー、すっごい雪!」

ドラゴンと僧侶がたどり着いたのは雪山だった。

雰囲気作りのため吹雪く山の中腹。

「ここいらに、ゲームプレイヤーがいるはずだが。おい、あまりうろちょろするな。深みにハマっても知らんぞ」

言ったそばから、僧侶の足が雪にハマった。

「あ、アグアグさーん!」

「痴れ者めっ。ほら、手を貸せ!」

よいしょっと、芋掘りの要領で僧侶を引っこ抜く。危なっかしいと、背中に乗せた。


「こんなに雪が降っているのに、ぜんぜん、寒くないですね。不思議です」

「キャラは着替えなどしないからな。薄着のまま雪山を移動するためだ。モコモコ防寒白クマみたいな服では、ゲームの面白みがなくなる」

「なるほど」

ザクザクと進むドラゴン。この吹雪では飛行出来ないための徒歩移動。

行き先は、頂上。ボスキャラは大概、ダンジョンの最深部にいるものであり、ゲームプレイヤーとてそこを目指す。

「アグアグさん、裸足で寒くないですか」


「言ったであろう。寒さなど感じぬ」

「でも、寒そうに見えます。今度来る時は、靴下履いて来ましょうね」

靴下を履いたドラゴンの不格好さを想像する前に。

「『今度』?今度と言うことは、また我が輩とここに来るということか」

ドラゴンは、その言葉の真意を知りたがった。

「はい。私は、アグアグさんのパーティーに入ってますから」

「そ、そうか、そうだな」

複雑な心境になる解答であった。

(パーティーとは、つまり仲間。仲間とは、つまり友達。友達とは、つまり仲がいいということ。なれば、これからもなでなでしてもらえたり、一緒にお空で散歩とかもしてもらえたり)

「アグアグさんっ、あれ!」

ドラゴンが足を止めれば、背から降りる僧侶。僧侶が駆けた先には、一匹のモンスターがいた。

氷で出来た敵キャラ、アイスマン。しかして、所々氷が欠け、溶け始めている。