キスなんて贅沢はいらないから

お兄ちゃんは家の用事を全部してくれる。

私も手伝うときはあるけど、確実に効率がいいのはお兄ちゃん。

掃除、洗濯、料理、なんでもできてしまう。

私の親みたいに。

本当の親は今この家にはいない。

元々父は離婚していないけれど、母は今遠い場所に転勤している。

お兄ちゃんが高校に入ってすぐの頃だったと思う。

母の元についていくのが普通だと思うけど、あのときの私は反抗期。

お母さんなんてだいっきらい。

そればっかり言ってた気がする。

転勤が決まったとき、私は友達と離れたくないなんて嘘をついた。

友達なんてどうでもいいのに。

そうしてずっと駄々をこねていたら、今の二人暮らしになった。

あのときはまだお兄ちゃんのことを意識してなかった。

ただの兄弟だと思っていた。

いつからだろう。

お兄ちゃんのこと、気になり始めたのは。

おかしいのかな。

誰が兄弟を想うのははだめだって決めたんだろう。

酷い話。

私はこんなにもお兄ちゃんのこと、大切に思っているのに。