「どうもしねぇよ。お前と二人になりたかっただけ」
そう言うと、芽衣は頬を赤く染めて顔を背けた。
わかりやすいヤツ。
オレは手を握ったまま芽衣の肩に寄りかかった。
「ふふっ、神矢くんって甘えん坊さんなんだね。かわい」
芽衣は優しく頭を撫でる。
女にこんなことされるとかガキみてぇだな。
少し前までならありえねぇわ。
「ね、神矢く…」
名前を呼ぶ芽衣の口に自分の人差し指を当てた。
「聖、……だろ」
ニヤリと余裕の笑みを見せると芽衣は躊躇ったように笑う。
「……ひじり、くん…?」
一瞬、ほんの一瞬。
名前を呼ばれただけで初めてドキッとした。

