逃げたいのに、逃げたくない。
触れたい、もっとそばにいきたい。
何も言えず、ただ神矢くんの瞳を見つめた。
そっと近くなるその距離に、あたしは静かに目をつぶる。
そして、唇に……ん?あれ?
目を開けると、クックと笑いを堪える神矢くんがいた。
「ブッ、お前…さっさと起きて準備しろよー」
……からかわれた。
「……これも夢?」
頬っぺたをつねってみても痛いだけだった。
制服に着替えてリビングに向かうと、テーブルに美味しそうな朝食が並べられていた。
「お前、これ食っとけ!オレ忘れもんしたから一回帰るわ」
「う、うん。わかった!朝ごはんありがとね。」
リビングから出て行く神矢くんを見送って、あたしは美味しそうなフレンチトーストを頬張った。

