「オレと歳の離れた兄貴と親父と三人暮らし。いつも仕事ばっかの親父がオレに見向きするわけなくて、7つ離れた兄貴も忙しくて構うこともなかった。こんなんで家族って言えんのかよってずっと思ってた」
初めて聞かされる聖の家族の話。
あたしは無意識に聖の手をギュッと握っていた。
「オレ、相当、愛ってやつに飢えてたんだろーな。大事なやつに裏切られて、ああ、こんなに脆いんだと思ったし、どうせ離れていくなら周りにいる友達も女も誰でもいいってな」
香純さんと零士くんのこと…
「オレ、ひろきが羨ましかった。両親にすげぇ愛されて。もし、母親が生きてて、もっとオレがまともでいい子に育ってたら道外さずに済んだのか…なんて考えたりして、バカだよな…」
バカなんかじゃないよ…バカなんかじゃ…
「今の自分を否定しないでよ。こうしてあたしたち出会えたんだから…今の聖をなかったことになんて考えないでよ!」
聖の目を見つめて言うと、聖はフッと笑った。
「フッ、すげぇ顔…何でお前が泣いてんだよ」
そっと、優しくあたしの涙を拭ってくれる。
「だ、だって…聖が……んっ」
壊れそうなものにそっと触れるように唇が重なる。
「わかったから、泣き虫。もう泣くな」

