5歳の子が考えることなんて、おもちゃが欲しいだとか、ヒーローになりたいだとか
そんな感じだと思ってた。
あたしだって小さい頃はそんな感じだったから。
でも、ひろきくんは違った。
今のひろきくんの思いを考えると胸がキューっと痛くなる。
そんなあたしの気持ちを知ってか、聖はそっとあたしの手を包み込むようにして握った。
「おれ、いい子にするよ?ワガママも言わない好き嫌いもしない……だから、キライにならないで…パパとママとずっと一緒いたい…」
初めて会ったときの偉そうで、生意気なひろきくんはそこにはいない。
思わず立ち上がりひろきくんの元へ駆け出しそうになったとき…
「ひろき……っ!!」
会場の後ろからひろきくんの名前を叫ぶ声がして振り返ると、松野さん夫婦がいた。
「……パパぁ、ま、ママぁ〜」
ステージ上で泣き出すひろきくんに松野さん夫婦が駆けつける。
「ひろき…辛い思いさせてごめんな。でもパパもママもひろきが嫌いなんて思ったこと一度もないぞ?ひろきはパパとママの宝物なんだからな」
本物のパパとママが登場することなんて思いもよらなかったんだろう。
泣きじゃくるひろきくんをお父さんは優しく抱き上げ頭を撫でる。

