「ちょ、ちょっと…」


髪が崩れるから抵抗するけれど、本当は嬉しいだなんて……

そりゃあんな夢見るくらいだよ。


全然神矢くんが足りない。


自分でもこんな恥ずかしいこと思うなんてビックリだ。


神矢くんはあたしの頬にチュッと触れるだけのキスをすると、そそくさキッチンに向かって行った。



不意打ちだよ……

ズルい、あんなさりげなくキスするなんて。


「お前が好きなグラタンの材料買ってきたから芽衣も手伝え」



ソファーで固まっているとキッチンからそんな声がかかる。



「あ、うん!」



神矢くん、材料買ってきてくれたんだ。

カゴを片手に買い物する場面を想像すると嬉しくなって思わずにやけてしまう。