よ、よし。
話を逸らそう。
「あ、あの、今度はビーフシチューの作り方お、教えてよね!?」
「……ああ」
「えと、それから…神矢くん…」
「……聖、だろ」
グッと引き寄せる力が強まる。
あたしの背中と神矢くんの胸が当たって神矢くんの心音が伝わってきた。
もしかして……神矢くんもドキドキしてるの?
「お前が他の男を名前で呼んでたらムカつくじゃん」
そんなこと、思ってたの?
神矢くんはあたしより余裕で何もかも主導権握ってて……
だからこの前、ヤキモチだって言ってくれて嬉しかった。
あたしだけがそんな思いしてると思っててたから。
本当はあたしと一緒なんだね。
あたしはお腹に回った腕に手を置いた。
「好きだよ。聖」

