( き 、きっつい •• !!! )

 人 、人 、人 、人人人 、•• 人!!

 今まさに満員電車に乗り合わせて
 しまいました 。妃奈子です 。

 わたしが通う高校は電車で四駅の
 共学の私立高校で 、
 部活動に力を入れているらしく
 古今東西様々な県や国から
 生徒募集をしているらしい 。

 大きな高校だから 、地元からの
 進学も多くてこの電車にも同じ制服を
 着た人が何人か目に付く 。


 ぎゅうぎゅうに人が詰め込まれた
 電車内じゃあつり革や手すりに
 捕まることも困難で 、
 わたしは両足を踏ん張って只々
 次に来る揺れにそなえるのだ 。


 ( あぁ〜 •• あつい くさいぃ〜 •• )


 人の熱気でむしむしする車内は
 すごく居心地が悪い 。

 肩からずり落ちたスクールバッグを
 掛け直して知り合いでも居ないかと
 車内を目線だけで見回した 。


 ( あれって •• )


 出入り口側のつり革につかまっている
 同じ学校の制服を着た男子生徒 。

 彼は確か 、生徒会役員か何かで
 集会の時に度々ステージに立っていた筈 。

 •• 名前 は 知らないけど 。


 つり革につかまりながらも 、
 揺れを微動だにしないその背筋は
 真っ直ぐしている 。

 細い銀色のフレームの眼鏡の奥の瞳は
 ぴたりと閉じられていて 、
 通った細い鼻筋に 、薄い唇は
 彼を中性的に見せる 。


 ( 男の癖にきれいだなあ〜 •• )


 そんなことをぼんやり思いながら
 がたんごとんと電車は揺れる 。

 
 満員電車を涼しげな顔で過ごす
 彼に 、不躾な視線を送っている間に
 高校の最寄り駅に着いたらしく 、
 出て行く人の波に乗りながら
 ちらりと視線で先程の彼を探して
 見たけれど 、もう降りた様だった 。