いつもは素通りする祠も 、
 今日は立ち止まってみる 。

 子ども達はわたしに気付くと
 元気に挨拶をしてくれた 。


 「 ひなこねえちゃんも 、
   ボロ神様におまいりすんの? 」

 「 ボロ神様!? 」

 「 うん!だってボロいもん! 」


 子どもとは時に残酷である 。
 わたしは黙って子ども達の頭を撫でた 。

 改めて祠に向き直り手を合わせる 。
 そして 、願い事 。


 「 誕生日までに素敵な
   彼氏が現れますように!! 」

 「「 却下 」」

 いつの間にか追いついていた
 美弦ちゃんが 、命都くんと
 ハモってわたしの願い事を
 全否定しやがった 。


 「 お前 電車良かったのかよ 」

 「 遅いので行くことにした! 」


 兄妹三人並んで商店街を通る 。
 八百屋さんにお肉屋さん 、
 お魚屋さん 、皆さん朝から
 元気に声を張り上げてらっしゃる 。


 「 みっちゃん!今日の夕飯に
  うちのお肉どうだーい! 」

 美弦ちゃんをみっちゃんと
 呼び止めるのは 、お肉屋さんの
 ご主人の剛三さん 。
 日に焼けた立派な身体が健康的 。


 うちの食卓のほとんどはこの
 商店街でまかなわれてるから 、
 おのずとどの店舗も常連なのだ


 みっちゃんと呼ばれた美弦ちゃんも
 しかめっ面しながら 、

 「 おっさんとこの肉は昨日の
   晩飯で食ったっつーの 」

 なんて 話してる 。
 うちのお料理担当は美弦ちゃんなのだ 。

 色々話してるうちにいつもの曲がり角 。
 兄達とわたしは別々の高校だから
 いつもここでお別れ 。


 「 じゃあ 行ってらっしゃい 」

 「 痴漢にあったら迷わずぶっころ 「 妃奈子ちゃん 帰り駅まで迎えに来るからね 」


 はーいと手を振りながら兄達の
 背中を見送る 。


 さて 、わたしも行きますか 。