フライパン片手のヤンキーと 、
 儚気な美形がノックも無しに荒々しく 乙女の部屋に踏み込んで来た。

 来て早々ブスってなんだ!?
 一人は心配してくれてるけども!

 痛む額に耐えながらぐぐ 、っと
 上体を起き上がらせて部屋の
 入り口を睨み付けた 。


 「 うるさいのはどっちよ!! 」

 わたしの渾身の睨みと叫びは
 こいつ等には無意味みたいで 、
 総スルーした上に部屋に乗り込まれた


 せめてもの抵抗でフライパン男の
 脛に頭突きをお見舞いしてやれば
 げんこつが落ちてきた 。いてぇ!


 「 朝っぱちから二階で騒がしく
   されちまったらゆっくり
   朝飯もつくれねんだよ! 」

 「 はぁぁ •• !? 」


 わたしの目線までヤンキー座りした
 こいつは 、一番上の兄である 。
 長めの髪をオールバックにして
 剃り落とした短い眉の間に
 深いシワを刻んでるその顔立ちは
 お父さんに似ている 。

 ぐちぐち小言を垂れるこいつに
 優雅に目潰しをかまし 、
 あまーい笑みを浮かべるのは
 二番目の兄 。
 生まれつき色素の薄い髪は
 さらさらで肌だって剥きたて卵肌 。
 こいつはお母さん似 。
 野郎の癖に •• !

 目潰しされて悶えまわる長男を
 完無視し 、わたしと向き合う様に
 片膝を付いた 。王子か 。
 そして眉を下げ わたしの頬に
 手を添えるのだ 。王子か 。


 「 おでこ 、赤くなっちゃったね 。
   早く下に行って冷やさないと •• 」


 「 良いよ こんくらい 。
   へーき へーk「 冷やさないとね 」分かりました 。」


 がたがた震えるわたしを満足気に
 見つめながら微笑むこいつは
 真性の腐れ腹黒だと思う 。

 ふう 、と一息ついたら立ち上がり
 兄達の背中を部屋の入り口まで
 グイグイ押し進める 。


 「 着替えるから出てってーー ! 」

 「 照れ屋さんだねぇ 、妃奈子ちゃん 」

 「 てめぇの貧乳には興味な 、
  いてぇ!殴るな 妃奈子 ! 」


 無事(?)廊下まで締め出したら
 兄達を見上げる 。そして 、にこり 。


 「 今日はスクランブルエッグが良いな 。
   豆乳で作ったココアも飲みたい ! 」


 「「 もう 出来てる 。」」


 •• さすが 、出来た兄達だ 。