冷蔵庫からくすねたりんごジュースは
 わたしの今日の朝ごはん 。


 ストローをさして 、ちゅーとすいながら
 いつもより遅いペースで最寄り駅を
 目指して足を進めた 。

 そしてまだ覚醒しきってない頭で
 ぽやぽやと考える 。



 ( 朝ごはん ••
  美弦ちゃんの作った甘い卵焼きを
  食べたかったけど仕方ないや 。)


 ( 卵焼き •• ? )


 ( •• あ ! お弁当作って貰ってないんだ ! )


 お昼の購買戦争に参戦決定である 。

 思わずその場に立ち止まり 、
 がくりとうなだれた 。


 「 お昼休みの購買なんて 、
   地獄絵図決定じゃん •• あ 。」


 うなだれた頭を持ち上げて目に
 飛び込んできたのは古びた祠 ( ほこら ) 。

 小学生達にボロ神様なんて
 言われちゃってる可哀想な祠 。


 「 ボロ神様ねぇ 」


 たしかに 、祠の木々は薄汚れて
 ボロボロでめくれているし 、
 石にも苔が生えている 。

 扉にべたべた貼られたお札は 、
 妖怪の町なだけに飾りなのだろう 。


 前は少なからずお供え物が
 あったけど今はもう随分見ない 。


 持っていたりんごジュースを
 揺らすとちゃぷりと聞こえた 。


 「 •• これ 、あげよう 」


 祠の扉の目の前にりんごジュースを置き
 手を合わせた 。


 「 だから ••
   あの悪夢を 、化け物をどうにかして 」


 ぽつりと漏らした声は静かな道路に響いた 。


 ってこんなことして何になるんだ !


 ハッ!として頭を振れば 、
 最寄り駅にむかうのだった 。