電車を降りて街中を歩くこと徒歩10分 。
 その大きな建物が見えてきた 。


 私立桜庭学園高等学校 。
 ここがわたしの通う高校 。

 幼稚舎から大学迄のエスカレーター式で
 わたしみたいな外部受験も少なくない 。

 生徒層は一般家庭の子からお金持ちまで
 様々で 、芸能科もあるから高校生の
 タレントやモデル 、アイドルも
 数多く通っているのだ 。

 そして何を隠そう 、桜庭学園は
 あの言い伝えの領主様のお城の
 跡地に建てられた学園らしい 。

 お城の跡地に建てられたとは
 思えないほど洋風な建物で 、
 白を基調とした校舎が並んでいる 。

 そして桜庭学園はカトリック系の
 学校なので 、所々にそれを思わせる
 装飾が施されているのだ 。


 校門をくぐり抜けわたしの在籍する
 普通科の校舎へ向かう 。
 が 、今日は人垣が出来ている 。
 ざわざわ煩い 。


 「 おい 、見ろよ •• モデルのsayaだ 。
   同じ学校だけど見たの初めてだ ••! 」

 「 梓馬くんと憂真くんだわ!
   テレビより素敵ーーー ! 」
 

 •• 芸能人達の登校に被ったみたい 。

 正に黒山の人だかり 。
 だけどこの人だかりを抜けなきゃ
 教室には行けない 。

 なんで 普通科の校舎は奥かなぁ •• !

 気合いを入れてスクールバッグを
 握り締め人だかりに突っ込んだ 。
 中々 ワイルドでしょ 、わたし!


 「 くっ ••!! 満員電車かよ ••! 」


 一目芸能人を拝もうと集まった生徒達に
 ぎゅうぎゅうに押し潰される 。

 少しずつ足を進めてようやく
 抜けることが出来た 。
 その頃には息が上がっていて
 両膝に手を置き肩で息をしていた 。
 現代っ子の体力の無さを恨む 。


 「 朝からお疲れだねえ 妃奈子 」


 ぜえぜえ息を乱すわたしの頭上から
 ハスキーな声が降ってきた 。
 わたしはその声の主を見上げ 、
 唇を尖らせる 。


 「 •• いつから見てたのよ 」

 「 人ごみに突っ込んだとこから 。」

 「 最初からじゃん!!
   見てたなら助けてよ!! 」


 この薄情な奴はクラスメイトで友人の
 久世 ( くぜ )このか 。
 中々にマイペースな奴である 。

 朝練終わりなのだろう 、
 タオルで流れる汗を拭っている 。
 そんな彼女に手を引かれ上体を起こした 。


 「 朝練だったの? 」

 「 うん 。自己ベスト出した 。」


 陸上部のエースのこのかには今後も
 期待だな 。うん 。

 基本無表情な彼女も気持ち
 喜んでいるように見えて 、
 わたしの頬も緩む 。


 キーンコーン カーンコーン


 「 !? HR始まる!! 」


 ほのぼの談笑してる場合じゃ
 無かったよ 。やばい 。


 「 このかっ!走ろ! 」


 教室まで急ぐ生徒達に混じって
 わたし達も走るのだった 。



 (( このか •• っ 、早っ ••!! ))

 (( 置いていかれた ••!!! )