朝ごはんを口に運び、制服に着替えて家を出たのは朝の八時ジャスト。
 


家から徒歩で十分という素敵な立地条件の高校も、今日から二学期に突入だ。
 
同じ制服に身を包む結ちゃんが、わざとらしくため息を吐いた。


「どうしたの、結ちゃん?」

「別に。また椎名の宿題の世話したり、テストの赤点対策に付き合ったりエトセトラの日々が再び始まるんだな、て感動してるんですよ」

「え、今のはどっちかっていうと、また苦労かけられるのか、やってらんねぇよってため息じゃなかった?」
 

私が訊ねると、とても素敵な笑顔を向けて、


「まさか。そんなこと、小指の爪ほども思ってませんよ?」


平然と明らかな嘘を吐きやがった。
 
笑顔の圧力に反論はせず、二学期もよろしくとだけ告げて通学路へと目を向ける。
 


同じ制服を着た生徒たちが、同じ方向に向かってちらほら歩いている。
 
このまま住宅街の集中する地域を抜けると、一面に田んぼがひろがって、その中央に鎮座ましますのが、我らが東光高等学校だ。
 

進学校としては県で中堅。普通科、理数科とわかれているが、とりたてて有名なことのない、精々部活動が時々県で上位に食い込むことがある程度の、平凡な高校だ。
 

ちなみに私も結ちゃんも普通科だ。普通科とはいっても、男女の比率は五分五分くらいで、理数科は男子の方が多いから、全体でみると男子六、女子四。あるいは、男子のがちょい気持ち多いくらいくらいの男女比だ。