きっと今あたしが、止めたら橙磨は怒るよね。


だから何も言わない。



それからは橙磨の脚の噂は聞かなくなったし、テーピングも巻いてるとこ見なくなった。


いつもの部活終わりに、あたしと橙磨二人っきりの部室。


日向くんは華奈ちゃんと早めに帰った。


「…膝、大丈夫なの?」

「さっすが結香。正直かなり痛い」

「やっぱり……。無理してまた病院なんてやめてよ?」

「心配してくれてんの〜?嬉しい!」

「ふざけないでよ…」


ケラケラ笑いながら、慣れた手付きで巻いてくテーピング。


痛々しいや……。


見てるだけで、あたしに出来ることが何もないって心が痛い。


「結香は笑って俺の応援しとけ!」

「…うん。でも、無理したらすぐ交代させて怒るからね!」

「はいはい。だから、そんな暗い顔すんなよ」


ポンポンと頭を撫でてくれる。


あたしが暗い顔してちゃダメだよね。


「ところで、俺今から着替えるけど着替え見たい感じ〜♪」

「んなわけないでしょ!バカ!」



なんとか、橙磨は大丈夫そう。