だから不安だけど聞いてみる。


何も知らないで、ぐるぐる悩むよりよっぽど良いでしょ?


「ねぇ……橙磨」

「ん?なしたの?」

「………なんであの時キスしたの?あたし達付き合ってないのに」

「…したかったから。結香とキス」



返って来たのはものすごく単純過ぎる答え。


あたしが逆に困ってしまう。


したかったからキスするの?



ってことは、そこに感情はないんだね。


橙磨の答えに何も言い返せないあたしは作り笑顔。


ちゃんと笑えてるかな、あたし。



「小雨になったし、そろそろ家帰るか。暗くなる前に」

「そうだね……。うん、帰ろう」

「良かったな。ちゃんとケータイ見付かって」

「ほんと良かったよ。着いて来てくれてありがとう、橙磨。迷惑かけてごめんね?」

「全然迷惑じゃねぇよ。大丈夫」


あたしに優しくして、突き放す橙磨はひどい。


感情がないなら、あたしに優しくしないでよ……。


先を歩く背中を見詰めて心で思った。