なんせ橙磨はあたしの大切なファーストキスを勝手に奪ってったし。


大泥棒め。


それでいて「忘れて」とか意味不明。


人の気も知らずに………。



特に何を話すわけでもなく、定期を使ってさっさと学校まで行く。


部活動の生徒が数人しかいない学校はこう……なんか、雰囲気あるよね。


「で……結香は何しに来たの?」

「部室にケータイ忘れたから取りに来たのよ!」

「暗い学校一人じゃ嫌って、ちょっとは女の子らしいとこあるじゃん♪」

「ふざけたこといらないから!早く取りに行くよ!」



職員室に部室の鍵を取りに行って、体育館への道を歩く。


校舎から一本の廊下で繋がった薄暗い道。


体育館から部室に行けるようになってるから道は遠い……。



「大丈夫?結香。怖いの苦手だったよな?昔から」

「大丈夫だよー。あれから大人になったもん!」

「へ〜そっか!じゃ、とっとと部室行こーぜ!」

「ま、待て!待ちなさい!」


スキップしてく橙磨の背中を追っかけて隣に並ぶ。


恐怖心に煽られて心臓がドキドキ高鳴る。