「おはよ、橙磨!あれ……寝不足?」
「その通り……眠たっ」
朝から欠伸をして、ぼやける目をゴシゴシこする。
そんな俺の腕を細い結香の腕がぎゅっと掴んだ。
「ダメだよ!こすっちゃ!コンタクトでしょ?」
「目の調子悪過ぎて今日入れてない。なんも見えねぇ……」
「じゃあ、今日はあたしが橙磨の目になってあげよっか?」
「お願いしまーすっ」
ケラケラ笑う結香の肩に、俺はふざけて手を乗せた。
元々、寝不足の原因は結香が俺を悩ませるせいだからな!
寝れなくなるほど人を好きになったのは初めてだ。
コンタクト入れてないと、ほんとになんも見えねぇな……。
眼鏡持ってくれば良かった。
「橙磨〜。段差とか分かるの?」
「それぐらいは分かるけど、電車の来る時間とか一切見えない」
「うーんとね……あと10分ぐらいで来るからね」
「りょーかい!」
ボヤける視界でも結香の可愛い笑顔だけは、ハッキリ分かる。

