春の夜風が吹き、少し肌寒い薄暗い道を橙磨と歩く。


8時過ぎだから、メロンパンを売ってる商店もさすがにシャッターを下ろしてた。


「やっぱ遅かったな。メロンパンはまた今度!」

「別にいつでもいいし……いらないよ」

「そっか……。なぁ、結香って今好きなヤツいねぇの?」

「いるよ」



唐突過ぎる質問にすぐ答えてしまったあたし。


橙磨はかなり驚いた顔してる。


好きな人なら……今すぐ隣を歩いてるヤツだもん。


「マジか……。え、誰?バスケ部?」

「うん。バスケ部の背高い人で2年」

「背の高いバスケ部の2年なんて多過ぎて分かんねぇよ!幼なじみなんだから、教えて!」

「じゃあ……ヒント。その人は腹立つほどバスケうまい!」


照れてる表情を見られたくなくて、あたしは橙磨の先を歩いた。


どうかこの気持ちバレませんように。



だって、バレたらもう一番近い関係が一気に崩れる。


「誰だよ〜教えろよ〜!」

「ダーメ!秘密」