「順番を待つ呪も、どれも進行してしまうのはどうにもならない」


「…ああ」


「解呪師は数がいない。世界にたった三人」


「そうだ。だから近くにいるときいて、ここにきた」


「皆そうだ。王族だから特別にはならない」



フードの下から口元がのぞく。ルギウスはその白い肌を静かに見返す。



「お前は、王族ならその権力で無理やりにでも人を連れ遣ることができるだろう。それを行使するか?お前の前に待つ、大勢の人間が呪に苛まされるのを知って」


「…」



王子は口を引き結ぶ。連れの男たちは、そんな王子を黙って見つめる。




しばらく待っても言葉が出てこないのを見て、フード頭は小屋の中へと歩いていく。




「っ」




その途中で、フード頭が足を止める。その手の中で、獣は小さくけけっと笑う。



「手を離せ」


「…すまないが、私は





――君が思うとおりの王族というものだ」




フード頭――カーズは、掴まれた腕を見て小さく嘆息した。






また一際深い呪がある、と。