お弁当を食べながら、何気ない会話をする。勉強のこととか、先生のこととか、ホントにただの世間話みたいなもの。

それでも先輩といるってだけで、ドキドキが止まらない。

先輩はコンビニで買ったお弁当で、生姜焼きが入っていた。

「お肉好きなんですか?」
「あぁ、これ?そうだね、お肉も好きだけど生姜焼きが一番好きでさ」

そう言った先輩の顔は少し寂しそうで、なんとなくこれ以上は聞けなかった。

「あれ、遊聖じゃん?あ、もしかしてその子が噂の、水田理湖ちゃん?」

話しかけてきたのは、ネクタイの色からして先輩の同級生。

フルネームで名前を呼ばれ、ジロジロと上から下まで見てくる先輩のお友達。

なんとなく気持ち悪くて、思わず目を逸らしてしまった。

「やめろよ?理湖が怖がってんだろ」
「へぇ、そんな芝居もやらなきゃいけないなんて、お前も大変だな」
「はぁ?意味わかんねぇし」

今、芝居って言った…?ねぇ、今確かにあたしには〝芝居〟と聞こえたんだけど…。