「でも、」 「?」 西村くんは厳しいまなざしを私に向ける。 「大切なこと、見失うなよ」 「大切なこと…?」 いまいちぴんとこなくて、でも西村くんの顔つきは厳しいまま。 「それに…」 そう言った西村くんは、少し声をひそめた。 「言っただろ。敵は近くにいるって」 その意味がわからなくて西村くんを見つめるけれど、西村くんの表情は依然として変わらない。 「敵って…」 その私の言葉は担任が教室のドアをガラリと開けた音に消された。