「お嬢、遅刻です」

「ごめん、ワタルゥ」



しかめっ面のワタルに、手を合わせる。



今日はなんだか謝ってばかりだな……と、ぼんやり思った。


青井くんにぶつかったあと、道に迷ってしまった。

若干遅刻したせいで、ワタルはちょっと不機嫌だ。



ま、ちゃんとたどり着けたからいっか!




ワタルが怒りっぽいのは、最近ずっとだし。

父さんが死んでからずーっとそう。




まったく、ワタルは私の兄さんみたいだ。




ほーんと、やんなっちゃうな、もう。







「……ん?」